台湾の街の風景をつくる「騎樓」とは?特徴や歴史を1級建築士の視点で解説。日本にない理由も

羊羊です!(@yangyang_xiaoqi)

台湾を旅行すると、街中で建物が道路にせり出した独特なアーケード状の歩道を目にしませんか?この特徴的な建築空間こそが「騎樓(チーロウ)」です。

本記事では、1級建築士の視点から騎樓の建築的特徴、歴史的背景、そして日本にはない理由まで詳しく解説します。

内容

まとめ:騎楼は“影”をつくり、街を歩きやすくする台湾の標準インフラ

台湾の強い日差し・スコールでも歩きやすいのは、建物の1階が通路として連続する半屋外アーケード=騎楼(騎樓/Qílóu/チーロウ)のおかげ。店先の活動が歩道側へ“にじむ”ことで、商いの賑わいと回遊性が増幅します。旅行者にとっては雨天の避難路・休憩場所にも。

騎樓(チーロウ)とは?基本的な特徴

台北・迪化街の騎楼アーケード。タイル床と柱列が連続する歩行空間
1階部分が騎樓。歩道のように歩くことができます。

読み方:チーロウ。漢字は 「騎楼/騎樓」(繁体字)。英語表記は Qilou

特徴:建物の上階が前面へ張り出し、1階部分に柱列と屋根がかかった連続通路が生まれるタイプ。私有地でありながら公共的に開放されるのが実態。

背景:もともとは中国南方から伝わった建築様式なのですが、日本統治時代の台湾で建築する際に必ず作る事が法律で定められました。暑さ・豪雨から歩行者を守る“影のインフラ”として日常に溶け込んでいます。

一級建築士メモ

床仕上げは洗い出し(テラゾー)やタイルが多く、店ごとに高低差・段差が残るためスーツケースやベビーカーは要注意。台湾の街を歩いていると建物が迫り出しているアーケード状の歩道をよく見かけます。

羊羊

騎樓は建物の一部!でも歩道の様に誰でも通る事ができます。

台湾の街は騎樓でできている

台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]の実際の使われ方様子
騎樓の様子。床は人工大理石やタイル、コンクリート骨材磨き仕上げなど様々

騎樓の半屋外空間が街として続いていることから、影の空間が街の至る所にでき、天気に左右されずに騎樓を通って快適に移動することができます。これが台湾の人たちが暑い季節でも外で行動できる理由です。

台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]の実際の使われ方様子
お店の椅子やテーブルも騎樓に置かれており、お店の一部となっています。
台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]の実際の使われ方様子
お馴染みのセブンイレブンも柱下に座れるスペースを設けています。
台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]の実際の使われ方様子
騎樓とは別に歩道も設けられているエリアもあります。

またお店側も移動式の厨房や、テーブルや商品を騎樓の下まで出すことができ、道ゆく人にアピールすることができます。

日本には馴染みのない空間ですが、感覚としては夏祭りの露店のような感覚です。

夫婦でちょこっと台湾移住の様子を発信中!

台湾の日々の様子は、ちょこっと移住日記にて発信しています!観光ではない、日常視点の台湾の様子を発信しています。騎樓のおかげで暑い夏の台北の隅々まで行く事ができました。

\1級建築士視点で台湾台北の良さを書いています/

\朝市で買い物から自炊までご飯をメインに書いています/

日本に騎樓がない理由は建物の法律にあり

騎樓は日本の台湾統治時代にできたにもかかわらず、日本には騎樓はありません。

日本に騎樓がない理由は、建築基準法や都市計画法といった街の使い方に関する法律にあります。

街には厳格な公私の境界線が引かれており、お店の看板やテーブルなどを敷地境界線を1mmでもはみ出して歩道に設置する事は法律違法になっています。(一部の地区では緩和されている場所もありますが特殊な事例です。)

法律のおかげで違法な出店や路駐がなく、きれいな街が保たれているのですが、台湾の街の賑やかさを体感すると、もっと街を使い倒しても良いのではないかと感じます。

日本唯一の騎樓:沖縄県のグリーンベル商店街

日本に騎樓はないと言いましたが、実は羊羊の地元、沖縄に1箇所だけ存在します。

沖縄県宜野湾市普天間にある「グリーンベル商店街」です。

写真を見ると一瞬、台湾の街のようにも見えます。

日本の沖縄県宜野湾市普天間にある台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]と似たような場所の様子
沖縄県宜野湾市普天間にある騎樓

昔は市場があり騎樓のある建物でもいくつかのお店が商売しており、かなり賑わっていたそうです。

現在では市場もなくなり、お店も閉店しており閑散としています。また建物の老朽化もありこの貴重な騎樓がなくなるのも時間の問題だと考えています。

Screenshot

しかし日本の法律のもとでこの騎樓空間を実現できていたことがとても興味深く、これからの街づくりのヒントにもなるのではないのでしょうか?このあたりにはコーヒー屋さんや古着屋さんなど感度の良いお店も増えてきているので、街の特徴を活かした街づくりを進めて欲しいと思います。

騎樓はいつかはなくなってしまう?

台湾の歩道空間「騎樓」[チーロウ]の実際の使われ方様子。違法なバイク駐輪の様子
騎樓に止められたバイク。駐輪場ではありません。

台湾でも騎樓について否定的な意見もあり、新しい建物には騎樓がなくなってきています。

バイクの違法駐車や違法な露店の出現など、また私有地なので維持費もかかる上に、歩道として解放しなければならないなどの理由があります。

しかし建築士である私の考えからすると騎樓こそが台湾の風景を作っており、街の賑わいを増幅させているように思います。利用方法が法律的にグレーなほど利用者側のアイディアを膨らみ試してみようという行動に繋がりやすいのではないでしょうか。

羊羊

最初からだめ!と言われたら、やる気も起きないですよね…

台湾は古いものを利活用するのがとても得意な国です。騎樓は他の地域にはない魅力的な空間なので、これからも残り続けていくことだと思います。

台北で“騎楼らしさ”を体感できるエリア

1)大稻埕・迪化街(台北)

乾物・茶・布地の老舗が連なり、連続する柱列とタイル床がフォトジェニック。昔の建物が多く残り旧正月前は特に賑わいがピークに。

2)剝皮寮歴史街区(龍山寺周辺)

清代のレンガ街並みと日本統治期の建物が混在。路地撮影がはかどるエリア。

3)西門紅楼~成都路周辺

赤煉瓦のランドマーク西門紅楼と周辺商店の現代的な騎楼が共存。ストリートの活気を体感。

台湾の移動には公共自転車YouBikeでの回遊は騎楼沿いが快適。登録方法は下記記事へ。

最後までご拝読いただきありがとうございます。

夫婦でリアルな台湾生活を発信中!

\1級建築士視点で台湾台北の良さを発見/

\地元朝市買物から電鍋料理まで台湾での自炊を公開/

羊羊&小七

台湾の日々の生活は、ちょこっと移住日記にて発信しています!観光ではない、日常視点の台湾の様子を発信しています。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
内容